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依頼による執筆原稿(2003年)

月刊 We learn Vol..611活動情報 2

財団法人日本女性学習財団発行

自己変革から社会変革へ

行動・共感・つながり--SEANの取り組み
遠矢 家永子(特定非営利活動法人シーン 代表)

ニーズありきで始まった

 高槻市委託女性学級「かまどねこの会」を立ち上げたのは1994年。みんなに好かれようとすればするほど嫌われ、かまどの中で毎日ススだらけで眠る宮澤賢治作『ねこの事務所』に登場する「かまねこ」のような自分から脱出しようと命名し、市からの委託を受け年10回程度の学習会を企画運営していた。
 '自己表現'や'自分気づき'などの学習からジェンダーの問題と出合い、ありのままの自分と向き合う作業を続けていた1997年7月、子連れの参加者が増え保育が必要になったことをきっかけに、他の女性学級2団体に声をかけ保育サポートグループ「ネットワークステーションとんがらし」を結成した。
 子育て支援は「母性」の名の下に「してあげる」という感覚で、低料金もしくは無償ボランティアで請け負われることがよくある。また、多くの女性たちが無償で行っている家事や子育ては社会的にはキャリアとして認められず、一旦家庭に納まった女性の再就職へのハードルは非常に高い。
 その現状へ問題を投げ掛ける意味で、「とんがらし」の運営形態は有償ボランティアとしての会員相互扶助とした。保育を請け負う側(ワーカー)は、今まで無償で行ってきた家事や保育の労働の対価を受取ることで自信を取り戻すことができる。保育を依頼する側(ユーザー)は、一時的に子育てから解放され、また就労の継続支援にもなる。必要とし必要とされることで、互いの内なる力に働きかけ、両者がエンパワメント(内なる力を発揮すること)していくことを目指している。

方向性の模索

 2000年になる頃に、これからの方向性として法人格をめざすのか、起業をめざすのかを議論した。まずニーズありきで保育サポートを主軸としてきた「とんがらし」の活動の中で、様々なジェンダーの問題と出合い、あれやこれやと取り組みを拡げるうちに、多岐にわたる活動へと発展していた。その延長線上で、利益追求ではなくミッションを第一目的に掲げるNPOの法人格を取得し、2001年4月名称も新たに再出発することとなった。
 SEAN(シーン)はSelf-Empowerment Action Networkの頭文字で、「一人ひとりが自ら行動を起こすことでエンパワメントし、つながることでさらなる行動を起こしていきましょう」という願いを込めて付けた名称である。
 その名の通り、誰のせいでもなく誰のためでもない、自らの選択により責任を果たしていく中で「誰もがありのままの自分を大切にできる社会」の実現をめざしている。
 女性学級「かまどねこの会」での学びを続ける中、学びは行動に結びつけなければ自己変革も社会変革もあり得ない事を実感していた。具体的な活動の中でこそ、学びは学びとして生きてくる。また、その活動を通して人と人とが出会い、相互に情報を交換し合い、影響し合うことができれば可能性は拡大していくことも実感してきた。

組織運営する中で

 私は人との出会いは、必然的に起こるものと思っている。活動を通し、本当に多様な人たちと出会う。多くの人がそこに集えば、行き違いや対立、衝突なども起こり得る。互いの価値観や成長速度のズレ、生育歴で抱えてきた問題の転嫁など、生身の人間同士の葛藤が当然のように起こってくる。
 その一つずつと真摯に向き合い、愚痴を吐きつつもあきらまず気長につきあい続けること、そしてその対立からさまざまな非暴力的解決方法を模索し、多様な生き方・価値観を共存させることが互いのエンパワメントになることを、日々の活動を通して実感してきた。

問題解決に向けた事業化

 これまで、多くの女性たちは「家族」にとらわれ、「家族」への奉仕者として生きてきた。そこでは、本来持っている力を発揮することは制限され、抑圧の中で自尊感情が育たないまま虐待やDVなどの問題も起こってくる。それらの問題解決に向け、具体的な事業化を日々SEANの中で模索している。
 着込んできたジェンダーを1枚1枚脱ぎ捨てるには、それと同じだけの時間が必要となる。その予防策として子どもたちへのジェンダーフリー教育の実施に力を入れている。特に、「ジェンダーと暴力」をテーマにした中高生対象のプログラム開発と提供に関しては、2年続きで民間助成金を取得することができ、次年度に向けてもさらなる事業展開をと考えている。
 また、現時点では、プロジェクトとして実施している保育サポートに、障害のある子どもたちの受け皿を作るため研修会を行っている。子育ての責任が母親一人の肩にのしかかるとき、障害がある場合はより社会的弱者であることからその抑圧は顕著に現れる。すべての子どもの権利を考えるとき、どういう状況にある子どもであっても受け入れ体制を整える必要性を感じている。
 そして、昨年度の「絵本とジェンダー」に関する調査研究(高槻市男女共同参画に関する活動補助金事業)の取組を、本年度はプロジェクトとして立ち上げた。絵本をジェンダーの視点で読み解き、絵本を通して子どもたちへのジェンダーの再生産がなされないよう、また多様で豊かな絵本との出合いを子どもたちに保障するために、2000年度以降出版の絵本の家族像を調査・分析し、年度末には報告書を発行する予定である。
 目の前の気になることを具体的行動に移し、その中で人と人が出会い共感し合う、そしてその関係での対立を力に変え乗り越えつながること、その体験が自己変革となり社会変革をもたらす。草の根の活動がやがてジェンダーフリー社会への実現になると信じ、これからも継続的に活動を続けていきたい。

◇ 連絡先 TEL/FAX 072-684-8584
E-mail station@npo-sean.org
URL http://www.npo-sean.org
* 月刊 We learn Vol..611 活動情報? 2003年9月号
     財団法人 日本女性学習財団発行

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