(07.05. 1)
デートDVを防ぐには
特定非営利活動法人SEAN(シーン)代表 遠矢 家永子(デート)DVとは、力と支配による人権侵害である
DV(ドメスティック バイオレンス)とは、夫婦などの親密な関係で起こる暴力のことで、日本でも2001年にいわゆるDV法が制定され、社会でも知られることとなりました。DV法は2004年に改正され、3年をめどに検討が加えられることとなり、2007年の改正ではデートDVを対象に入れるかどうかが争点になると言われています。<デートDVにおける様々な暴力>
身体的暴力...殴る、蹴る、つねる、小突く、物を投げるなどなぜ、デートDVは起きるのか?
夫婦間や事実婚におけるDVでは、1つ屋根の下に住み日常を共にしており、子どもがいたり世間体があったり、別れることは容易ではありません。経済的に自立ができないなどの理由もあって、暴力を受けても我慢せざるを得ず、障害や殺害などの事件にまで至ってしまうことは、許される事ではありませんが想像はつきます。しかし、恋人間であれば付き合うことも別れることも自由なはずなのに、なぜ暴力が生じても逃げることが出来ないのか、不思議に思われる方が多いのではないでしょうか。蔓延する日常の中の暴力
SEANで高校1年124人(女子73人・男子51人)に、アンケート調査を実施しました。暴力に関する調査結果では、「家族の中で暴力をみたことがある」と答えた生徒は女子38%、男子51%、「大人から体罰を受けたり、受けている子どもをみたことがある」と答えた生徒は女子が41%、男子が55%でした。虐待や体罰は、大人と子どもの構造的な力関係の中で、強者の位置にいる大人が「愛情表現」であると弱者の子どもにふるう暴力です。今回のアンケート結果でも、約2人に1人の生徒がそういった状況を見聞きしています。子どもの人権を侵害する虐待や体罰の中で育つことで、「愛しているから暴力を振るう」「相手が間違っていることを伝えるのに暴力を振るってもいい」などの、歪んだ人間関係を学んでしまう恐れが生じます。また、「学校で生徒同士がけんかして、暴力をふるうのを見たことがある」と答えた生徒は女子89%・男子96%でした。通常、女子よりも男子の方が、暴力に囲まれて日常を過ごしていると言えます。「強く、負けない」といった「男らしさ」の価値観は、「強者」「弱者」といった支配関係を肯定することであり、「やさしさ」を期待される女子とは違って、男子は「たくましく」あってほしいといった期待から暴力が容認される事が多いのです。そして、女子89%・男子82%の生徒たちが、「マンガやテレビドラマなどで、嫉妬や愛情表現・感情表現のために相手をたたくのを見たことがある」と答えており、社会には暴力が蔓延し、人権侵害を見抜く力あるいは把握する力が育ちにくくなっています。「愛」と「支配」「束縛」の違い
「離れたくない」「嫌われたくない」「自分に関心を持って欲しい」という気持ちが恋愛感情にはあります。ささいな束縛であれば、喜びを感じてしまうこともあります。独占欲や嫉妬もまた、愛の表現として理解されているので、支配され所有される関係に気づきにくいわけです。そのうちに、脅しや泣き落としなどから恐怖感、不安感や依存関係が生まれ、別れられなくなってしまうのです。その上、恋人間の場合、法的な整備もなく命に関わるような危険な状態でも警察などの動きが鈍く、「別れないあなたの問題」とする周囲の関わりが被害者を更に追い込んでいきます。「恋人に期待したいこと」「恋人から期待されたいこと」(アンケート結果より)
恋人がいることは当然であり幸せなことであると、TVなどのメディアが取り上げない日はなく、恋愛に関する消費をあおる情報も日常生活にあふれています。子どもたちが読むコミックや情報誌には、特に少女マンガに男の価値は「強さ」や「指導力」であり、支配されることは愛の形であるとの表現も多く、少年マンガは女の価値は「従順さ」や「性的なからだの魅力」として表現しているものが多いのが現状です。デートDVを予防するために
「愛」と「支配」「暴力」は違う行為です。「愛」は互いを思いやり大切にし、安心できる関係の中で尊重し合うことであり、DVは不安や恐怖心で相手の自己決定権を侵害する暴力であり犯罪です。その違いを把握するには、育ちの中で安心と信頼で尊重される居心地の良さを体験することが必要です。そして、恋人間における「彼女役割」「彼氏役割」といった性役割へのとらわれに敏感になる教育も必要です。また、子どもたちをとりまく様々なメディアには、「愛」と「支配」を混同させ、女性性を商品化する情報が横行しています。「生」と「性」について考え学ぶ人権教育は、デートDVや性暴力を予防するためにも必要不可欠なのです。