旧年中は、たいへんお世話になりありがとうございました。
みなさんの関わりに助けられ、新しい年を無事に迎えることができました。
怒涛のように過ぎ去った2015年。昨年末に「今年の漢字」は「安」と発表されましたが、どちらかというと不安の「安」だったのではないでしょうか。
終息しない福島原発と立て続けに承認される原子力発電の再稼働。台風、大雨、温暖化。武器輸出、「テロ」という名の暴力の連鎖と後を絶たない難民。「集団的自衛権」という名の戦争加担への容認。
性をとりまく課題も後を絶たず、少女たちを売り物にするJKビジネス、SNSを使ったリベンジポルノ、低年齢化する着エロ(着衣のあるエロティシズム)やスクールセクシュアルハラスメント、などなど。挙げればきりがないくらい不安材料が頭をよぎります。
「茶色の朝」(フランク・パヴロフ著、ヴィンセント・ギャロ絵、藤本一勇訳 大月書店)という本があります。
「犬も猫も茶色の毛並みであることが、国家から許された『生存するための条件』となり、それ以外のものは殺処分されていく。人々の中には心を痛める者もいるが、けっこうあっさりと忘れていく・・・」
最初は、「人ごと」として気にも留めなかった国家統制による差別や抑圧が、自分の身に及んだときには取り返しのつかない状態になっているということを、物語は読者に伝えてくれます。暴力的解決方法を容認するだけではなく奨励し、負の財産を未来の子どもたちへ受け継がせていく政治的な流れを、「茶色の朝」にたとえる人はSEANの周辺では少なくありません。
少しあきらめていた矢先に、声をあげているSEAL’sなどの若者たちの存在を知り、あきらめずに少しずつでも継続していれば流れが変わる時が来るのだと思いなおしました。 幼稚園や小学校で出会う子どもたちと、一人ひとりが持つ人権や育つ権利について一緒に考えながら、小さな取り組みの先に希望をつなげていきたい。それを大人の責任力として提唱していこうと思います。
今年は、ポルノ被害に関する相談事業の着手など、新たな一歩も踏み出します。手探りではありますが、着実に前へ進めていきますので、ご支援ご協力をお願いいたします。
今年もよろしくお願いいたします。
SEAN事務局長 遠矢 家永子