明けましておめでとうございます。
旧年中は何かと大変お世話になりました。ありがとうございました。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
コロナ禍の収束が遠のいている今日この頃ですが、引き続き、生活支援や出前授業、絵本カフェ、まいまい楽座と活動いたします。
NPO法人SEAN務所休業期間
2021年12月27日(月)から2022年1月5日(水)
※1月6日(木)より通常業務を開始いたします。2022年も引続き、よろしくお願いいたします。
維新の伸張と「憲法改正」
私は、大学で憲法を講義することを仕事にしています。そして、日本国憲法を活かすことによって日本社会をよくすることがまだまだできると信じている立場から、先の総選挙の結果とその後の動きに危惧を抱く点があります。その点について少し書きたいと思います。
□驚きの衆院選結果
総選挙の結果には、予想通りと想定外とがありました。野党議席の顕著な増大は期待できない──この点の予想は残念ながら当たってしまったのですが、想定外だったのは「日本維新の会」の議席伸張でした。2012年の54議席には及ばず、2014年と同じ41議席ではあるものの、今回の「31議席増」は(予想していなかっただけに)十分衝撃的でした。そしてその維新が、「憲法改正」に前のめりの姿勢をあからさまにしているのです。
□「来夏の参院選に憲法改正の国民投票」?
維新の会といえば、「憲法改正」に積極的であることは周知の事実。とはいえ、選挙から2日後の松井代表の発言には虚を突かれました。「来夏の参院選までに国会が憲法改正原案をまとめて改正を発議し、国民投票を参院選の投票と同じ日に実施するべきだ」と、記者会見で述べたのですから。
改憲の期限を区切る発言は、2年前の憲法記念日に安倍首相(当時)が、「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」と述べたのに次ぐものです。松井氏の発言は、安倍氏や自民党に代わって改憲の先導役を担う意志を明確に表明したものといえるでしょう。
□維新の改憲論の危険性
実は、維新の改憲論は、復古色の強い”自民流”ないし”安倍流”改憲論とは一線を画する手強いものです。維新の総選挙マニュフェストから彼らの改憲論を見てみましょう。それは次の3つです──「教育無償化」「統治機構改革」「憲法裁判所」。
これに対して、自民党が2018年に決定した「改憲4項目」は以下のものです。 ──「9条改正(=自衛隊の明記)」「緊急事態条項」「参院選『合区』解消」「教育の充実」。
自民の改憲項目と比べると、維新の方が「洗練」されていることがわかります。何といっても「9条改正」を掲げておらず、「緊急事態条項」(それは内閣の権限拡大や国民の私権制限を連想させます)も含めていません。つまり改憲論から、(9条改憲につきまとう)”復古色”や(緊急事態条項が帯びる)”強権性”を払拭しているのです。
代わりに彼らがトップに掲げるのは「教育無償化」であり(自民の「教育の充実」より鮮明です)、残りの2つはいずれも「機構・制度改革」で、イデオロギー色のない「中立感」を漂わせています。このような庶民受け(=教育無償化)と中立性(=機構改革)が、維新改憲論の「手強さ」のゆえんなのです。
□反対の声を広げよう
しかし、維新が「強権」や「復古」と無縁でないこともまた、彼らの牙城である関西の市民には周知のことでしょう。実際、総選挙マニュフェストには、「防衛費の増大」「宇宙空間等への防衛体制の強化」「領域内阻止能力(=敵基地攻撃能力の言い換え)の検討推進」をしっかりと掲げていますし、「国民に愛される、歴史と伝統に根ざした皇室制度の維持」をうたっています。
まずは第1回目の憲法改正を庶民性と中立性を伴った項目で行ない、改憲の「国民的な成功体験」を経た上で、本丸の9条改憲を行なうという、以前から危険視されてきたシナリオが現実味を帯びかねません。それだけに、すぐにでも維新改憲論の危険性を多くの人に伝え、反対の声を広げていきたいと思います。 (監事 中里見博・大阪電気通信大学教員)